InAs, GaAs, ZnOを用いた量子井戸サブバンド光学デバイス |
半導体量子井戸構造(QW)におけるサブバンド間遷移は、量子カスケードレーザ(QCLs)、赤外検出器(QWIPs)などの長波長光学デバイスに応用されています。我々は、3種類の材料を用いて量子井戸構造サブバンド光学デバイスの研究・開発を行っています。 |
QCLsは活性層におけてキャリアを複数回発光させることで、中赤外からTHz領域において高出力で発振する半導体レーザです。その性能は構造に依存しますが材料にも大きく依存します。我々は中赤外QCLsの材料として、他の材料と比較して有効質量が小さく、高い伝導帯オフセットエネルギーをもつ InAs/AlSbに注目して研究を行っています。現在までに世界初となるInAs QCLsの発振に加え[1]、液体窒素温度での低閾値電流動作[2]、室温動作[3]、高温動作[4]を実現してきました。またInAs/AlSb QCLsにおいてサブバンド間とバンド間の同時レーザー発振も実現しております[5]。 |
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Fig. 1 発振スペクトル |
Fig. 2 電流密度-光出力特性 |
Fig. 3 サブバンド間とバンド間の同時発振 |
THz領域では、低い残留キャリア濃度を有し、かつバンドパラメータが良く知られているGaAs/AlGaAsに注目して研究を行っています。我々はこれまでに周波数3.1-3.8THzでのレーザ発振に成功しております。また、閾値電流密度の温度依存性を解析することで、閾値電流密度の特性温度を制限する熱LOフォノン散乱時間を見積もりました[6]。 |
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Fig. 4 THz 発振スペクトル |
Fig. 5 作製した試料の電流密度‐光出力特性 |
さらに、我々は低閾値電流密度化、及び高温動作化が期待できる金属‐金属光閉じ込め導波路を用いたTHz QCLsを作製しました。その結果、閾値電流密度Jthを0.8kA/cm2まで減少させ、最高動作温度を146Kまで増加させることに成功しました。 |
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Fig. 6 Cu-Cu導波路断面のSEMイメージ |
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Fig. 7 金属-金属導波路を用いて作製した試料の
電流密度-光出力特性
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ZnOを用いた量子井戸構造は、サブバンドデバイスとして高い潜在能力を秘めています。その大きな光学フォノンエネルギー(60meV)は、THz
QCLsの特性温度T0を制限する熱励起型LOフォノン散乱割合を減らすことができます。加えて電子-フォノン間の強い相互作用と大きな伝導帯のバンドオフセットエネルギーにより、広いスペクトルバンド幅をもつ超高速のQWIPの実現が期待できます。最近我々は初めてZnO
によるQWsでのサブバンド間光学遷移を観測しました[7]。ZnO/MgZnO QWsはプラズマMBEによって、O極性ZnO基板上に成長しました[8]。
光電流スペクトルから得られた遷移エネルギーは、計算によって得られた遷移エネルギーと良い一致を示しました。 |
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Fig. 8 n型ZnO/MgO MQWsの低温における
電流-電圧特性と光電流スペクトル
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Fig. 9 計算値との比較
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References |
[1] K. Ohtani and H. Ohno, Appl. Phys. Lett. 82, 1003 (2003).
[2] K. Ohtani, K. Fujita, and H. Ohno, Appl. Phys. Lett. 87, 211113 (2005).
[3] K. Ohtani, K. Fujita, and H. Ohno, Electron. Lett. 43, 520 (2007).
[4] K. Ohtani, Y. Moriyasu, H. Ohnishi, and H. Ohno, Appl. Phys. Lett.
90, 261112 (2007).
[5] K. Ohtani, H. Ohnishi, and H. Ohno, Appl. Phys. Lett. 92, 041102 (2008).
[6] Tsung-Tse Lin, Keita Ohtani, and Hideo Ohno, Appl. Phys. Exp. 2, 022102
(2009).
]7] M. Belmoubarik, K. Ohtani, and H. Ohno, Appl. Phys. Lett. 92, 191906
(2008).
[8] H. Z. Xu, K. Ohtani, M. Yamao, and H. Ohno, Appl. Phys. Lett. 89, 071918 (2006). |