金属磁性体素子をそのメモリに関する研究

 超ギガビット(Gbit)級磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)の高速アクセス実現(10-9sec)およびテラビット/平方インチ(Tbit/in2)級ハードディスクドライブ(HDD)の低ノイズリードヘッド実現のためには、トンネル磁気抵抗(TMR)素子の磁気抵抗比を増大させ、それらの素子を低抵抗化する必要がある。従来、非晶質のアルミナ障壁を用いたTMR素子では磁気抵抗比が室温で70%程度であった。本研究成果では、障壁に(001)面に高配向させた結晶性のマグネシウム酸化物(MgOを用いることにより、室温で従来値を大幅に上回る472の世界最高の磁気抵抗比を観測することに成功しギガビット級MRAMの高速化に有効な技術を確立した。又超ギガビット級MRAMの情報書き込み方式として期待されている電気的磁化反転(スピン注入磁化反転)において、閾値電流密度を106A/cm2以下まで減少させることに成功した。本研究は、文部科学省RR2002, ITプログラム"高機能・超低消費電力メモリの開発”の一環として行われている。


Fig. 1    作製したトンネル磁気抵抗素子の概略図とSEM像。ピラーサイズは80x240nm2である。
Fig. 2    トンネル磁気抵抗比のトレンド。これまでに472 %のトンネル磁気抵抗比が得られており、この値は世界最高である。
Fig. 3    電流密度と面積抵抗の比。Sample Aは270℃で、Sample Bは300℃で熱処理されている。Sample Aで観測されたスイッチングに必要な電流密度は7.8x105 A/cm2、sample Bでは8.8x105 A/cm2で、いずれも106 A/cm2以下となり非常に低い値を実現した。   


文献
1. Y. M. Lee, J. Hayakawa, S. Ikeda, F. Matsukura, and H. Ohno, Appl. Phys. Lett. Vol. 89, 042506(1)-(3) (2006).
2. S. Ikeda, J. Hayakawa, Y. M. Lee, R. Sasaki, T. Meguro, F. Matsukura, and H. Ohno, Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 44, L1442-L1445 (2005).
3. J. Hayakawa, S. Ikeda, Y. M. Lee, R. Sasaki, T. Meguro, F. Matsukura, and H. Ohno, Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 44, L1267-L1270 (2005).
4. J. Hayakawa, S. Ikeda, F. Matsukura, H. Takahashi, and H. Ohno, Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 44, L587-L589 (2005).