強磁性半導体
●はじめに |
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●III-V属強磁性半導体 (Ga,Mn)As |
私たちが研究している(Ga,Mn)AsはIII-V族強磁性半導体と呼ばれる材料系の一つで、1995年に結晶成長に成功しました。母体となる半導体GaAsに磁性原子Mnをドープして作成します。下図のように、ドープしたMnはGa位置に置換されます。置換したMnはU価の原子で、GaはV価の原子なので、正孔を1つ放出します。この正孔と、Mnの持つ電子の相互作用により、強磁性が発現します。
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●作製方法 |
(Ga,Mn)Asは、分子線エピタキシ法という方法を用いて作製します。
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●磁気的な性質について[1,2] |
物質がどのような磁性を持つかということを評価する上で、最も一般的な方法は磁化測定です。これは外から、例えば磁石などによって生じた磁界によって、試料がどのように、どの程度磁化するかを測ります。下に示す図は5K(-268℃)における(Ga,Mn)Asの磁化測定の結果です。
図3:T =5 Kにおいての(Ga,Mn)Asの磁化測定の結果(Mn濃度3.5%)。 |
●電気的な性質について[1,2] |
一般に半導体は室温から温度を下げるにつれ自由電子が原子に拘束されるため、その電気抵抗は大きくなることが知られています。(Ga,Mn)Asにおいても室温である300K(27℃)付近から温度を低くすると抵抗が徐々に大きくなります。しかしMnを3〜6%程度混入した場合には、ある温度で抵抗がピークとなりその後温度の減少につれ、抵抗が減少する様子が観測されます(下図)。このピークは(Ga,Mn)Asが強磁性体に変わる温度の位置であることから磁性が関与した現象であると考えられます。
図4:シート抵抗(面抵抗)の温度依存性。[1,2] |
図5:外部から磁場を印加したときの(Ga,Mn)Asの電気抵抗(Mn濃度5.3%)。印加する磁場が大きくなるにつれて抵抗が小さくなる様子が見られる。[1,2] |