分子線エピタキシ装置

(Molecular Beam Epitaxy : MBE)



 MBE(molecular beam epitxy :分子線エピタキシ)法は,各原料を加熱し,その分子線を基板に到達させて結晶成長(エピタキシャル成長)を行う方法です。蒸着(メッキ)法の一種ですが,一般の蒸着法とは以下の点で大きく異なっています。

・超高真空チャンバ内で行う :チャンバ内を真空ポンプで引き,さらに周りを液体窒素で冷却することによって超高真空(10-10Torr程度)にします。そのため,チャンバ内の残留大気は非常に少なくなります。原料原子は装置内で他の分子と衝突せずに直進できるので,分子線として振る舞い,原料原子の中間反応を避けることができます。また,装置内の清浄度が高いため,不純物の混入を低減できます。

・原料原子の温度を独立に制御できる :各原料はそれぞれクヌーセンセルに入れており,それぞれの分子線強度をセルの温度によって制御します。分子線のオン・オフはセル前のシャッタによって行い,原子層レベルの組成制御が可能です。

・その場観察装置が利用できる :ほとんどのMBE装置には反射高エネルギ電子回折(RHEED)が設置されており,これを用いて成長表面の観察,原子層レベルでのその場の成長モニタを行っています。また,走査型電子顕微鏡(SEM),走査型トンネル顕微鏡(STM)などを用いることにより,大気に晒さずに清浄な試料表面を観察できます。

これらの特徴により,界面の組成が原子レベルで急峻な組成を作製することができます。そのため,超格子構造やヘテロ構造などの作製に多く用いられています。


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